Book / 小川糸 / 食堂かたつむり [書評]


 
 
自然との共生、田舎暮らし、エコライフ、ロハス(以下略)。

こういった言葉たちが私たちに思い起こさせるのは、やさしくて争いのない世界のイメージです。雄大な自然に心身を溶け込ませ、春の日差しのように降り注ぐその恩恵を身体いっぱいに受け、ゆるやかな時間を生きる。そんな期待。

この小説は、田舎で暮らすことのディテールを淡々と描き切ることで、そんな私たちの淡い期待を見事に裏切ってくれます。

人との別れ、死、生き物を殺して食べること。

都会を離れ、雪深い山奥の町で暮らし始めた主人公が遭遇するのは、豊な自然がもたらす癒しというよりは、生きることの苦しみや悲しみでした。しかし主人公は、「料理」という方法で世界と向き合い、ひとりの人間としての正しい生き方を模索しようとします。

あらゆるものごとには入り口と出口があり、表と裏があります。

「食堂かたつむり」の素晴らしいところは、そのいずれをも、どちらに偏ることもなくあくまで冷静に表現しているところだと思います。

もちろん、料理にまつわるシーンもたっぷりと描かれています。どの料理も、今すぐ食べたくなるくらいに魅力的なものばかり!野菜たっぷりの「ジュテーム・スープ」なんて、本当に香りがただよってくるようでした。

誰にでも自分の「食堂かたつむり」がある。人生は、自分にフィットした「かたつむりの殻」を探すプロセスである。そんなメッセージが伝わってくる小説でした。

映画を見る前に、読んでみることをおすすめします!
 
 

 
 

 
 

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