Diary / 阿佐ヶ谷スパイダース アンチクロックワイズ・ワンダーランド

“反時計回りの”ワンダーランド。

阿佐ヶ谷スパイダース・長塚圭史さん作・演出の舞台、アンチクロックワイズ・ワンダーランドを下北沢・本多劇場で観てきました。

実は僕、舞台についてはほぼ初心者で、何がいいとか悪いとか、自分の中にまったく基準がありません。今回の公演も、長塚圭史さんがasahi.comでインタビューを受けていたのを見て初めて知ったというミーハーっぷりです。

で、どうだったかというと、とにかく素晴らしかったです。

無理矢理例えるなら、鍾乳洞の天井からしたたり落ちる石灰水のしずくが長い時間をかけて鍾乳石を作り出すように、舞台上で交わされる言葉のひとつひとつが、決して派手ではないけれど、ゆっくりと確実に心のひだひだへと染み込み、やがて自分の心の奥底に、悠然と水面を湛える「長塚圭史」という名の湖ができあがっていく。そんな舞台でした。(書いてて意味不明。笑)

個人的に、舞台は映画のサブセットであるという偏見をずっと持っていて、舞台という装置上で可能な表現の幅は、映画には到底及ばないだろうと思っていたのですが、そんな思い込みは見事にくつがえされました。

まず舞台って、登場人物とその衣装以外はほとんど何もないので、演出家のテクニック次第で、舞台上にあらゆる世界を表現できるのですね。時間も空間も自由自在にコラージュしてしまえる。なんのへんてつもない四角い木製の舞台に、複数の空間と時間を表現していた長塚さんの演出は、おおおーーっって感じでした。こんなんできるんか!という。光の使い方もグレェーーーーートでした。

ストーリーは、主人公である小説家が、ある事件を通して自身の中にある「仮想」の世界に触れてゆくという内容です。経験主義的な理解を超えた「仮想」世界の価値を問い直す、というメッセージを感じました。「脳と仮想」(茂木健一郎)で語られる非経験主義的世界や、映画アバターで登場する「科学では理解できない」世界や考え方に、近いものがあったと思う。

舞台がこんなに気持ちがよくておもしろいものだと知らなかった自分が、ほんとにもったいなかった。こういうものを世の中に出してくれて純粋にうれしかったし、感動したし、言葉の価値も再認識できたし、見てよかっただす。
 
 
 
作・演出:
長塚圭史
出演:
池田鉄洋
内田亜希子
加納幸和
小島 聖
伊達 暁
中山祐一朗
馬渕英俚可
光石 研
村岡希美
山内圭哉

スタッフ
美術:二村周作 照明:小川幾雄 音響:加藤 温 衣裳:伊賀大介
演出助手:山田美紀 舞台監督:福澤諭志 制作:伊藤達哉
 
 

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